Podcast『アワノトモキの読書の時間』 Work Teller ep48-1
気温がすっと下がって、Tシャツから長袖に着替える日がやってくると、
空気が少しだけ澄んで感じられます。
まるで、美術館の扉を静かに開けたときのような、音の少ない世界。
今回のエピソードは、そんな秋の入口に読む一冊として、
ミヒャエル・エンデの『モモ』をあらためて手に取るところから始まります。
かつて読んだはずなのに、細部は驚くほど思い出せない。
けれど、時間と物語の力についての核のような部分だけが、
今の自分に深く染み込んでくる――そんな読み返しの体験が語られます。
もう一冊は、村中直人さんの『〈叱る依存〉がとまらない』。
親として、上司として、あるいは指導する立場として、
「叱らざるをえない」場面はどうしても訪れます。
けれど、そのとき自分は本当に相手のために叱っているのか、
それとも「叱る」ことで安心したい自分の側に寄りかかってはいないか
――40代という年齢で向き合うと、胸の奥がざわつくテーマでもあります。
番組では、エンデの物語が投げかける「時間の使い方」と、
村中さんの本が描く「叱るという行為の依存性」が、少しずつ重なっていきます。
正解を急いで求めたり、「叱る=導く」といった古い価値観に無意識に
従ってしまったりする日常の感覚が、会話のなかで静かにほどかれていきます。
ただ話を聴くこと。
相手の速度に合わせて待つこと。
結果を急がずに、余白ごと受け止めること。
モモの在り方に触れながら、「叱る」「導く」といった
言葉の手前にある態度そのものを、もう一度考え直してみる回です。
秋の夜長に、本棚からそっと二冊を抜き出して、
自分自身との距離も含めて「関わり方」と「時間」を
見つめ直したくなるようなエピソードになっています。
書籍情報
・書名:モモ
・著者:ミヒャエル・エンデ(訳:大島かおり)
・出版社:岩波書店
・書名:〈叱る依存〉がとまらない
・著者:村中直人
・出版社:紀伊國屋書店
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